青春もんすたぁっ!(自作小説)

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1:おおかみちゃん:2017/08/28(月) 13:48

転校生の菅原桜太郎は誰もいない放課後の教室で突っ伏していた。

転入の挨拶を済ませた朝から夕方に差し掛かるついさっきまで質問攻めにされていたからだ。
あらかたの行事が終わった二年生の12月と言うこともあってか、転入の理由から家庭環境まで根掘り葉掘りといった感じで一切休める時間がなかった。

(少しは僕の事も考えて欲しいよなぁ……)

机のヒヤリとした感触が話疲れて熱を持った頬に気持ちいい。

そのままの態勢で足をブラブラさせていると黒板側の扉がガラリと音を立てて開いた。

(……? )

突っ伏していた顔を上げ、扉の空いた方に目を向ける。
開けた主は女の子だ。

艶やかな黒い長髪に華奢な体躯、いかにも文学少女然としているのだが眼鏡の奥に揺らめく目は怪しい鋭さを帯びていて、彼女に黒猫のような印象を与えた。

彼女も少年の視線に気がついたのだろう、罰の悪そうに口を開いた。

「あなた……見ない顔ね」

ふいに声をかけられた桜太郎も視線を一旦そらすと態勢を建て直して答えた。

「あ、あぁ……今日転校してきたんだ」

彼女は興味なさげに「あっそう……」とだけ答える右後ろ側の席に向かう。
そこが彼女の席なのだろう、彼女は机の中から今日配られた三学期用の教科書を取り出すとパラパラページをめくっている。

(しかし……)

綺麗な目だ。
窓から差す夕方の光に溶け込むようなオレンジ色で、日本人には珍しい。

(ハーフかな?)

「ハーフじゃないわ」

彼女にいきなり語りかけられ、ビクッとする。

(しまった、口に出てたか)

桜太郎はなんだか恥ずかしく頭をポリポリとかく。

パラパラと教科書をめくっていた彼女だがふいにその教科書を近くのゴミ箱に投げ捨てた。

「え!?」

思わず声を桜太郎に訝しげな視線が刺さる。

「……何?」

「え……?だって……今の教科書……使わないの?」

「いいのよ、使えないから」

彼女は桜太郎にそう告げるとまた入ってきた入り口へ向かう。

(へんな子だなぁ…)

桜太郎は心の中で呟く。
来学期から使う教科書を配られたその日にすてる人など珍しい人種だ。

入り口へ向かう彼女を視線で見送っていたが彼女がふと振り向いた。

「へんな子で悪かったわね、転校生の桜太郎くん…それと私と話さないほうがいいわよ」

そういうと彼女は扉を閉め、出ていった。

ポカン……と彼女が出ていくのを見ていた桜太郎だが、ふと我に変えると彼女が出ていった扉へ走って向かう。
廊下を見渡すが既に彼女の姿は無かった。

桜太郎は呟く

「あいつ……なんで俺がへんな子って思ったの……それに…名前…俺言ってないのに」

彼女に一度つっこまれてから、口に出す内容には気をつけていた。

間違いなく今回僕はそれを口に出してない……










彼は無人になった廊下を、五時のチャイムがなるまで唖然と眺めていた。


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