__ご主人、今日もお忙しいご様子でいらっしゃいますね……。
電子レンジである私(ワタクシ)めに出来ることと言えば、ご帰宅された際に手に持っているそのコンビニ弁当。
それをこう、なんか……ちょうどいい感じに温めることくらい。
ですがこんな私めにも、後輩が居るのでございます。
「やい冷蔵庫殿。冷やすことしか能のない愚か者め」
「あ? てめぇ、今なんつった」
そう、冷蔵庫殿にございます。
優しく温めることの出来る私、冷やすことしか出来ぬ冷蔵庫殿。
どちらがご主人に信頼されているか……確認するまでもございませぬな。
「おい電子レンジ! 夏は俺の方が使われてんだよこのタコ! 素麺はあっためちゃ美味くねぇんだっつーの!」
「おやおや、何も解っておりませんね。……トマトスープ」
「は?」
「トゥメィトスープに入れれば温かくても全然OKなんですよ! というかむしろ温かくなければ! この夏期限定野郎!」
「あぁ!? こっちは年中使われてるって何回言ったら解んだよ! 朝のトーストと夜の弁当しか使われないくせによぉ!!」
「なんですと!?」
……まぁこんな感じで、宿敵、はて、ライバルと言うのですか?
なのでございます。
私共が尚も言い争いを続けていると、
「ま__まぁまぁ、喧嘩は止してくださいよ」
「貴殿は__エ、エアコン殿!」
エアコン殿の仲介、これは言い争いなどという無意味なことは止めなければなりません。
何せエアコン殿はこのアパートの部屋に元々いらっしゃった備え付け。
一番の先輩であり、頭は上がらないのでございます。
「ちっ……しょうがねぇな」
冷蔵庫殿も引き下がるご様子。
__ですがこの時、私共は気がつきませんでした。
クローゼットの中から覗く、嫉妬に燃えた涼しげな青い青い瞳に。