(2)
翌日の朝、梨絵たちは教室で昨日の歌唱会(?)について総括していた。
「昨日は大勢の人たちから拍手を貰えて良かったね」
梨絵が絹恵と未来、そして他の女子たちに向かってそう言った。その言葉にこの場にいる全員が頷く。
「てっきり、石ころとか投げつけられるかと思ったよ」
未来がそう言った。あまりにも斬新過ぎる歌に、聴衆たちの反応がとても気になってはいたものの、聴衆たちの多くが拍手したのだ。決して悪くは無い反応である。
「でも、ほっとした」
未来の言うとおり彼女らの多くは、ほっとしていた。
「でもさ、理事長もよく許可してくれたよね」
絹恵がそう言うと話題は、理事長の話に変わる。
実は今回の歌唱会(?)は、理事長の許可があってのものであった。当初、梨絵たちは流石の水平学園理事長も、
こんなご時勢であるから国の顔を窺がって許可など出さないだろうとネガティブに考えていたところ、結果はご覧の通り許可されたのである。
「理事長からの許可があったとはいえ、私たちは歌って大丈夫だったのかな」
絹恵は、歌ったことへの代償があるのではないかと考えていたのだ。だから他の者たちとは違って決してほっとなどしていなかった。
「絹恵ちゃん。もう過ぎたことは気にしても意味は無いよ! 」
絹恵と比べて、梨絵はポジティブだった。この言葉に絹恵も、この場限りではあるが、少しは気にすることを忘れられた。