普通の中学生。
それが最も私に当てはまる言葉だった。
学力平均、体力平均、そんな私には一人だけとても仲の良い友達がいた。
「盟友!」
突然後ろから聞こえた声に、行動を示す間も無く、誰かが私の背中に抱きつく。
うわっ、と声を上げ、顔を自分の首筋に擦り付けてくる少女の方を見る。
少女が私の視線に気がつくとこちらをじっと見つめる。
「…な、なんだよ。」
「おはよう!盟友。」
状況を確認する。現在私は、クラスの自分の席に座っている。少女の言い方から察するに、どうやら私は寝てしまっていたらしい。
「盟友がなかなか目覚めないから、わざわざ起こしてあげたんだよ?」
「あー、そりゃどーも。」
素っ気ない返事に少女は頬を膨らませる。
「もう少し感謝したらどうですか?め・い・ゆ・う・さぁ〜ん?」
その酷くベタついた言い方に、私は少し苛立ちを覚える。
「はいはい。…って、次移動教室じゃん!」
時間割表に目を向けると次は理科の授業だ。
ガタンッ、と立ち上がると体が机に当たり音を立てる。その立ち上がった衝撃で私の首に手を回していた少女が少し離れる。
「ほら、早くいくよ。#@$*。」
名前を呼んだ筈なのにその名前の部分が聞こえなかった。少し不思議に思ったが、今はそれどころではない。次の授業が迫っている。
「…何言ってるの?」
瞬間、少女の目が大きく見開いた。
「この世界は此処しかないよ。私と盟友だけしか居ない世界。」
何か様子がおかしい。いつもと雰囲気が全く違う。この盟友は私が知っている盟友ではない。
ポタッポタッ、と水が垂れる音が聞こえる。気づけば少女___盟友が変わり果てた姿でこちらを見ていた。
目は黒く染まり、身体はスライムのように溶けてきている。
「!?」
自分が置かれている状況に気づき、ハッと息を呑む。教室の隅から、正体不明に黒い物体が迫って来ている。
「盟友。世界は終わったんだよ。」
一体何が起こっているのだ。
混乱のせいで頭が回らない。
「でも、私は生きてる。だから盟友!私を…」
そこで私の視点は闇に移り変わった。