紫月というのは、紅月と蒼月が交わったときに見られる途轍もなく珍しい現象だ。
数十年、数百年…運が悪ければ数千年以上見ることは無いとされる紫月。
それが夜空に浮かんだとき、「【紫月】の下で愛する人と誓いを交わすと、その二人は地の果てにおいても結ばれる」とも言われている程だ。
ただ、実際に紫月を見た者が圧倒的に少ないため、噂といて扱われることが多いのだが。
ジュリエットの問いに、ルトーは首を振った。
「いいえ、私は見ておりませんよ。お二人が見られたというのならば、屋敷の使用人も見たことがあると思うのですが…」
「ええ、そうよね。どうしてお母様とお父様はあんなことを仰っていたのかしら」
仮に紫月が夜空に浮かんだのならば、その日は国をあげての宴となるだろう。それほどまでに珍しい現象なのだから、二人しか知らなかったというのは何とも奇妙なことだ。