逃亡者【短編】

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3:アーリア◆Z.:2018/02/21(水) 22:07

私は予定を変更することにした。この女性が嘘ついているかもしれないが、もしこれが本当なら私は即牢獄へ行くことになるだろう。
 予定を変更すると言うのは、どう言うことかというと、マジノランド共和国とプロエルン連合帝国、そしてパスタニア王国の3つの大国の狭間にある小国、ベリツ国を目指すということである。マジノランド共和国とプロエルン連合帝国の国境は、通称「鉄の壁」と言う要塞線により封鎖されていることから、国境検問所を通過する他入国する方法は無い。他方、ベリツ国との国境線は簡易的な柵が設置されているだけであるから、その柵を容易に乗り越えることができるのであった。
 もちろん、国境検問所以外の所から入国することは不法入国ではあるが、この場合「とある国際法」により違法性は阻却されることから、少なくともベリツ国で処罰はされないだろう。

「しかし、なぜ今日から実施されることになったんしょうかね」
 
 ・・・・・・・・・・・・

「さあ。私に言われてもそこまでは」

 私がその理由までもを聞くと、女性は少し間が空いてから、そう答えるだけだった。
 この態度に少し違和感を覚えたが、私は特に追及することはしなかった。そして、列車はまた途中駅に停車する。相席に座っていた女性は、少し前に列車の出入り口に移動してた。恐らくこの駅で下車するのだろう。私も急遽、ベリツ方面への列車へ乗り換えるため、女性が向かった方とは別の出入り口へ移動する。わざわざ別の出入り口へ移動したのは、先ほど女性にロンドークへ向かっていると言ってしまったからである。ロンドークに向かう人間が、ここで列車を降りるとなると、不審に思われるだろう。

 そして、私は列車を降りて、ベリツ方面の列車を待った。因みに今私が持っている切符はロンドークへ行くために購入したのだが、料金としてはロンドークよりは、ベリツ方面のほうが安いので、新たに切符を買いなおす必要は無い。
 それから、無事にベリツ方面の列車に乗ることができ、ベリツとの国境に近い駅で下車した。
 その駅からは、街道をそれて、雑草が生い茂っている場所を、とにかく前へ前へとひたすら進んだ。3時間ほど進むと、目の前には、一直線に張り巡らされている柵があった。高さは2メートルはあるが、木で作られたお粗末な柵であり、私は簡単にそれをよじ登り、ベリツ国に入国したのである。とても地味で簡単すぎる入国であるがため、プロエルンではなくベリツに居るという実感はあまり無かった。
 とは言え、今度はベリツから、マジノランドだ。国境検問所で査証を見せれば、即マジノランドへ向かうことが出来るだろう。私は、気が軽くなった。


 ・・・・・・・・・・・・だが、まだプロエルンから逃げきっては居なかったのである。

上 終わり


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