第一話
『
甲「僕は動産甲。今日、ご主人様のAとお別れすることになるの」
乙「俺は不動産乙だ。Aの野郎がBに甲を売りやがったんだよ」
甲と乙が話しかけていたのは債権丙に対してだった。
丙「へえ。っていうことは僕は債権なんだけどAB間の売買契約に基づく代金債権が僕ってことか」
乙「そうだよ。お前が生まれなければ、甲は俺とずっと一緒だったんだよ! 」
不動産乙は丙の存在を徹底的に否定すが故に罵った。
丙「乙君は馬鹿だよね。僕が生まれなくても贈与契約で甲君がいなくなっちゃうかもしれないし……それに、僕なんか債権者Aが債務者Bから弁済を受けたら存在ごと消えちゃんだよ? 」
乙「てめえが消えようが関係ないね! てめえに価値はないんだよ。ただの無体概念の分際でよ」
不動産乙の罵りは収まらなかった。
甲「2人とも喧嘩はやめてよ。それに、丙ちゃんと違って私は消えたりしないわ! 」
丙「……」
1、終わり。
』