扉を開け、店内に入ったとたん独特の生臭さが彼女の鼻に入った。思わず彼女が鼻を押さえたときに、暖簾のかかった奥の部屋から店主が姿を現した。その姿は“肉屋”と冠した店には似つかわしくないもので、異常なほど細く、ガレていた。 「お客さんは、この店は初めてだね?」 そう言った店主は不気味な笑みを浮かべていた。主婦はその表情を不審に思いつつも、ええ、と返した。