chapter-I -1
……一体、何処で何をやらかしたのだろうか。
この不肖、七ッ木 光介、高校2年生。
今まで教師に立て付いた事など一度も無く、成績はいつも上の中程度。特に可もなく不可もない生活態度で過ごしてきて、何の問題もなく生活してきた。はず。そう、はずである。
だとしたらこの状況は一体何だ。
本日高2の一学期始業式。担任もクラスメイトも変わり、さあ心機一転! 今日もお仕事頑張るぞい!と意気込んでいた。
だというのに、その初日からいきなり先生に「あとで職員室に来なさい」宣言である。
……何処に間違いがあった……⁉
原因はともかくまず職員室に入らなければ話が始まらない。それはわかる。
分かるんだがどうも足がすくんで動かない。明らかに取っ手を掴む右手が震えている。
ここまで来たらもう開き直ってやろうか。
「くっ……俺の右手がうずくぜ……!」みたいな。
中に何が入っているかは考えていなかったな、やめよう。
何はともあれ、俺はそんな震える右手で職員室の入り口である引き戸の取っ手を掴み、ゆっくりと力を入れていく。
と、その時だった。
目の前の扉がひとりでにスライドしていき、俺の理解の範疇から文字通りすり抜けた。
あまりに一瞬で反応し切れなかった俺は、指を取っ手にかけたままだったせいで、指が扉に持っていかれ、そして見事に____
____思いっきり挟んだ。
「_____ギャアァァアァアァアアァイッタァアァアアアッ⁉⁈」
「あっ……ごめんなさい」
情けなく涙目になりながら蹲る俺を見下ろして、とても申し訳ないと思っているように感じられない、一貫とした無表情でそこに立っていたのは……
一人の少女だった。