Chapter l-2
「………………」
「………………」
「………ごめん、見てなかった。それじゃ」
「お、おう……気をつけてくれ……」
さらっと謝りさらっと去っていく少女。
……非常に腑に落ちない部分があるのだが、謝ってくれただけ良しとしよう。世の中には謝りすらしない奴もいるからな。うん。
さっきの少女には見覚えがある。栗色の髪を後ろに一纏めにしたポニーテールの女の子。確か同じクラスの女子だ。
ガイダンスの時に随分と大人しい人だとは思っていたが、多分あの調子だと大人しいというより無愛想なだけだろう。
挟んだ指を見る。腫れて少し赤くなっているものの、爪は剥がれてないし、放っておけば痛みも引くだろう。
気を取り直して、俺は職員室の扉に指をかけ、慎重に開いた。
「えー……2年C組の七ッ木 光介です……あのー、水上(ミナカミ)先生はいらっしゃいますか……?」
「おー、七ッ木くーん、こっちこっちー」
多くの机が立ち並び、卓上に一台ずつPCか置かれている。そのうちの一台の陰から手が伸びてひらひらしているのが見えた。
しかし軽いな。そんな調子でいいのか先生よ。
何を言われるのか、一抹の不安を抱えながら水上先生の机に歩いて行った。
と、目の前まで行くや否や、まず先生が一言。
「七ッ木君さ、帰宅部だよね?」
「……え、はい」
突然何言い出すんだこの人。喧嘩売ってんのか。
少々怒りを覚えるレベルの、あまりに直球な物聞きである。
「んじゃさ、部活作りたいんだけどさ」
「何のですか」
「______ゲームの、だよ」
「____はい?」