Confiserie de sucre

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2:響◆Odo:2018/04/15(日) 23:05

【雨】
「わたしね、雨女なの」
左手にある窓からは、鉛色の空と雨粒が窓を叩き、濡らす様子が見える。
急に雨が降り出して、あわててカフェに避難してどれくらい経ったのか。
丸い木のテーブルを挟んだ先に座る彼女は、寂しそうに眉根を下げて首をかしげる。
ふわ、と揺れた栗色の髪からは桜の香りがした。
わたしは、と口を開きかけてふと思った。
小学校の遠足、中学校の体育祭、高校の修学旅行……。
いわゆる学校行事の日は、いつも青い空が広がっていたような、そんな記憶ばかりだ。
ふむ、こうやって思い返すと、わたしは随分と天気に恵まれていたように感じる。
「わたしはね……うん、よく晴れてた」
「いいなあ」
すっかり冷めたミルクティーの入ったカップに手を添えて、彼女はわたしに目を向ける。
薄い茶色の液体がゆったりと揺れた。
「わたし、ずっと行事とかは雨だったから……きっと、今日も」
窓を一瞥して、目を伏せながら、ぽつりとこぼした。
長いまつげが彼女の白い肌に影を落とす。
この天気は自分のせいだと、そんなふうに訴えているのだろうなと。
鈍いわたしですら分かった。
だから、彼女の顔を見て、にこりと笑ってみた。
「大丈夫、わたしがいれば」
なんと言うか迷っていることを悟られないように、窓に顔を向ける。
いつのまにか雨音は止み、雲の切れ目からは太陽が覗いていた。
彼女もそれを見ると、わたしに微笑んだ。


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