その男、闇夜に紛れられず複数人から注目を浴びていた。
赤いマスクにより表情は認識することができない。消灯したビル群に囲まれ、
注目を今もなお浴び続ける赤ずくめの男はただただその場でおろおろとするばかり。
すると、なんだなんだと集まりだしてくる人混みの中をかき分けて、女が割入ってきた。
男と同様顔を隠すように青いマスクをつけ、とてもスレンダーな青ずくめ。
周囲からは何重にも重なったサイレンの音が聞こえだし、
「いくわよ」
女は、シビレを切らしたか注目を浴び続ける男の襟の首根っこを掴むと、好奇の目から流れるようカツカツ歩き出し路地裏へと消えて行った。
その場に居合わせた者達はそれぞれ顔を見合わせ、そのあと何事もなかったかのように散らばっていく。
少しすれば、先ほどまで近くで鳴り響いてたサイレンの音はいつの間にやら遠くの位置に。
一人その場に残った黒マスクの私は、その場をあとにした。
これは、目立つ格好をした二人が理不尽に刃向かおうとしていく…そんな物語を間近で見届け続ける私の、少しばかり事実を誇張した日記。
ちなみにこの後の出来事はよく覚えていないので書かないこととする。