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「これが金貨袋でございます」
「どうも」
別室に移動した私は、執事らしき男性から金貨袋を受けとった。
貰う物も貰ったのでそろそろ王宮を出ようと思った私であったが、その前に聞いておきたいことを忘れていた。
と言うのも国王からの話を聞いた限りでは、今回の『召喚』についての主導権はまるでこの異世界側にあるのかのように感じた。そこで『召喚』が異世界側による行為だとして、一体どのような原理によるものだろうか? それが気になるのだ。
という事で、執事らしき男性に聞いてみることにしよう。
「実は先程から、召喚というものが気になっていましてね。一体どのように行われているのかと」
「召喚でございますか。召喚の儀式は毎度、王宮魔導士総長のマレックス様が直々に執り行っております。ですが召喚魔法は一度に多くの魔力を消費してしまうとのことございまして、召喚成功後直ちに別室にて休養をとられております」
ほう? どうやら、『召喚』は魔法によって行われてるらしい。少なくとも科学技術によるものではないということだ。これは面白い情報ではないか。
「ところで、その王宮魔導士総長のマレックス様とは、私のような身分の者がお会いすることはできたりします……? 」
私はダメ元で聞いてみた。まあ、執事相手に聞いても意味のないことかもしれないが。
「失礼ですが、貴方のお名前をお聞かせくださいませ」
そうそう。異世界へ来てから、まだ一度も自己紹介をしていないのだ。
「あ、まだ自己紹介が済んでいませんでしたね。東沼英一郎といいます」
「東沼英一郎さんですね。少なくとも今日は難しいです。ですが私の方からマレックス様に掛け合っておきますので明日にでも、またお越しください。その際には門番に、執事のドナットに用があると告げていただければ結構です」
「承知いたしました」
そして、私は王宮を後にした。
今日を以て、異世界での生活が始まるのである。