(3)
「毎月当たりの家賃は、金貨5枚だが、どうだろうかね」
幾分かの金貨を受け取って城を出た私は、早速、住まいを確保するために不動産商人の店を訪ねたのであった。何をするにもまずは住まいは大切だ。
まあ、そもそも国王からお金を貰っていなければ、無一文で住まいどころか飯も食えなかったわけだが、不幸中の幸いとでも思っておこう。いや寧ろ、純粋に幸運か。
「わかりました。それで構いません」
私は不動産商人から提示された物権を賃貸しようと、申込むことにした。
「では、敷金として金貨15枚を予め払ってもうぞ」
敷金か。この世界でもそういう制度はあるようだ。
「敷金ですか……わかりました」
私はそう言って、金貨15枚を取り出して渡した。不動産商人はそれを受け取った後、店奥から地図と鍵などその他、色々と持ってきたのである。
「これが部屋の鍵、こっちは部屋までのルートが記された地図だ。それと、これが契約書と借主であることを証する文書だ。契約書は今ここで名前を記入してくれ」
「ありがとうございます」
私は鍵と地図、そして借主であることを証する文書を受け取り、契約書にサインをした。
……まあ、日本と違って手続きが簡単で楽だけど、怖いな。それはともかく、私はあららためて礼を言って店を後にした。
※
俺……ミサト・ショウヘイは今とても変な場所にいる。と言うのも、ここは異世界の王宮とのことらしい。
最初は馬鹿にされているのかと思ったが、スマホは圏外と表示されているしもしかしたら本当に異世界なのかも? と、今は半信半疑の状態である。
で、俺は何故か勇者の1人として召喚されたとか。他にも4人の日本人(その内、3名は同じ高校の女子生徒)がいたが、1人は勇者ではなかったとのことで、既にこの場にはいない。……そうそう、もう既にこの場に居ないあの男性のことだが、やけに冷静だった。個人的にはあの男性に付いていたいと思っていたりする。だって……心細いし。
「さて、諸君は勇者として召喚された。とはいえ、その力はまだ発揮できないであろう。であるから、まずは我が王国の騎士団と共に訓練に励むとよい」
王様? らしき人物はそう言った。
騎士団と共に訓練に励めって、軍隊みたいな訓練をさせられるのかよ。嫌だな……。
「わかりました……。もうここが日本ではないみたいですし、とりあえず頑張ってみます」
「どうせ夢の中なんだろうけど、頑張ってみよ」
「…………頑張る」
同じく召喚されたであろう他の女子生徒3名はどうやら、心を入れ替えたのかそれぞれ、そう答えた。何だよ、やっぱり精神的には男より女の方が強いってか?
まあ、こうして俺の異世界生活? は始まったのであった。