【第一話】〜私と同じ名前を名乗る人〜
ー4月6日(金)夕方ー
「たっだいま〜!……あ、そっか、誰もいないのか。」
私は一人で呟きながら自分の部屋に入った。
(あ、そうだ、この鏡…)
部屋に入って真っ先に視界に入ったのがあのデカイ鏡だった。よく見ると、とても特徴的な形をしている。黒い縁に、炎のような型どり。まるでおとぎ話に出てくる呪いの鏡のようだった。
その鏡はまるで私の帰りを待っていたかのように部屋の真ん中にそびえ立っている。
(ちょっと不気味だな……)
私は、誰かが見ている訳でもないのに、足音をたてず、静かに近寄った。
「ん?」
近寄ってみると、黒い縁の下の方に小さなスイッチがある。私は、震える手で恐る恐るスイッチを押した。
(・・・・・・!?)
鏡の中が変わった。さっきまで私の勉強机と鏡に近づいた私を映していたのに、どんなに動いても私は映っていない。それに、勉強机に誰か座ってる…?
(…女子高校生、だよね?)
なんで私の机に人が座っているの?
今この部屋には、それどころかこの家中誰もいないはずであって…
私は後ろを振り返った。しかし、誰かがいるはずはなくて……
私はもっと詳しく見ようと思って鏡に手をついた。
………つもりだった。
私の手は鏡に引き込まれた。
それから何分経っただろうか。案外あまり経っていないのかも知れない。
目を開けると、あの鏡の中の女子高生が私の顔を覗き込んでいた。
「………っっっ!?」
私は驚きのあまり、声にならない声を出して飛び起きた。
「びっくりしなくていいよ!私の名前は吉野 未来。星城女子高の新一年生だよ!あなたのお名前は?」
これが彼女が放った第一声。私は驚きのあまり声を失った。だって……
“彼女の名前は私と同じ名前だったから”…