〖episode 2〗名前。
監禁されている所は、綺麗で壁が真っ白だった。そして彼は、私に気づくとペコリとお辞儀をした。
「ぼくノことハお前ト呼んでください」
よく通る_綺麗な声。
「私は_あなたに温もりを与えるために来たの。だから、名前をあげるわ」
会長から貰った資料には「名前をつけてあげる」と書いてあった。
「ナ、マエ_?」
カクンと首を傾ける。私は少し考えてから
「あなたへの、プレゼント。どんなのにしようかな・・・」
彼にないものは何だろう_あ!
「ぼくハどんな名前デモいいです。プレゼントなんて久しぶりダ_」
久しぶりダ、の言葉に引っ掛かる。具体的に言えないが、違和感って感じ。
「あなたの名前はヒロト。漢字で書くと、大きいに翔ぶ。あ、とぶってこの漢字ね!」
私は大翔と書く。彼は_大翔はじっと字を見る。気に入らないのかな。
「ぼくハ大翔ですね。とてもいい名前です。あなたノ名前ハなんですか?」
私は自分の名前を名乗ってなかったことに気づいた。
「私はエミ。漢字で書くと、笑うに美しい。こうかくの。笑美。」
「これから、よろしくおねがいしま」
「待った!」
挨拶をしようとするヒロトを遮って私は言う。
「敬語じゃなくていいよ。いい?ヒロト。」
彼が笑ったような気がした。ヒロトに心はないのに。
「わかった。エミ。」