episode1
「 片桐さん、今日も皆と一緒にお弁当食べようよ! 」
「 おっ…サンキュ!あ、でも今日お弁当忘れちゃったんだよな… 」
「 えー?!お弁当忘れる人なんて初めて見たかも…。うーん…じゃあ私のお弁当ちょっと分けようか? 」
「 い、いいのか…?ありがと! 」
「 いえいえ!多分他の人からも分けてもらえるって! 」
「 そ、それはどうかな… 」
「 大丈夫だよ! 」
あの時は楽しかったのに。
なのに、なのに、なのに…今では楽しいと思える事が無いの。
けど、クラスを…片桐さんを…大切な人を守るためなら私は命をかけてでも抗い
守ってみせる__…
絶対に。
_今日から二学期!綺麗な廊下を勢いよく走る少年は教室のドアをガラッと開けた
「 おはよう! 」
明るくて良い笑顔と、透き通った大きな声で挨拶をしたのは羽矢学園高等学校の1年、片桐遥斗だ
「 おはよう!片桐さん! 」
他の誰よりも真っ先に彼の挨拶に反応したのは同じく羽矢学園高等学校の1年、有栖川奏
遥斗とは席が近くて仲が良い
「 片桐もありすも偉いねー。うち挨拶とかするのいつも忘れちゃうんだけど! 」
あははと笑いながら言うがそれを聞いた奏は、
「 挨拶は1日の始まりの証!
だから忘れないようにしてよー! 」
「 ごめんって!明日からはちゃんとするからさ! 」
「 もー! 」
奏はぷくっと頬を膨らませながら可愛げに言う
「 皆、席につけ 」
皆で盛り上がってた所に邪魔するかのように教室に入ってきた教師。皆は少し嫌そうな顔をしながら急いで席に座る
遥斗達のクラスの担任、佐久間祐也先生は顔立ちが良くクラスの女子からは容姿だけなら人気がある。そう、容姿だけ
佐久間先生はいつもだるそうな表情をしているが、厳しい面が多くクラスの皆からはあまり良く思われてない。
「 今から転校生を紹介する 」
「 え?転校生?」
ざわざわと話し声が聞こえてくる
確かにそうなるだろう。
この時期に転校なんてまず普通は無いし、そんな簡単に転校は出来ないのだから。
「 うるさいぞ、話すのをやめろ 」
先生がそう言った瞬間話し声は全く聞こえなくなった。しかし気になって話したくなったのも仕方がないとは思う
「 花江、教室に入っていいぞ 」
そう言って教室に入ってきたのは
綺麗な水色の髪と白い肌をした美少女だった
「 …初めまして。花江みのりと申します。どうぞ、よろしくお願いします。 」
無表情で自己紹介をし、お辞儀をした転校生
花江みのりとこれまた綺麗で可愛らしい名前だ
「 という事で今日から花江もクラスの一員だ 」
相変わらずやる気の無さそうな顔をした先生
見ているこっちまでやる気をなくしそうである
「 ちなみに席は片桐の隣な 」
「 え、俺の隣? 」
遥斗はきょとんとしながら隣にある机とみのりの顔を交互に見る
片桐の隣に席なんて二学期が始まる前は無かったのだから驚くのも当然だ
「 よろしくお願いします。片桐さん 」
「 よ、よろしくね。花江さん… 」
「 そんじゃ校内の案内も片桐に任せるぞ 」
「 え、ええ!?
あ、はい!」
今日は転校生だったり、案内だったり大変だ。と思いながら少しあたふたと取り乱すが、すぐに大きな声ではっきりと返事した
__なんだかんだで時間が進み放課後へ
「 えーっと…時間が放課後くらいしか無かったから…。校内の案内今からでもいいかな?最終下校時刻までには終わると思うから! 」
「 …はい。 」
両手を合わせ、必死そうに言い訳をする遥斗を見てこくこくと首を縦に振るみのり
するとどこからか足音が聞こえてきた
さらっとした髪を揺らしながら遥斗とみのりのもとへやって来たのは有栖川奏だった
「 有栖川!?ど、どうしたんだよ? 」
「 いやー、片桐さんだけだとちょっと心配だったからさ。急いで追いかけてきたの。えへへ 」
「 えへへじゃねーよ…びっくりしちゃったじゃん… 」
「 ま、いいからいいから!最終下校時刻までには終わらせるんでしょ! 」
「 そうですね。早く案内お願いします 」
みのりもそれに賛成し、無表情で遥斗にお辞儀した
「 だって!はやくしなよー!片桐さん! 」
「 分かった!分かったから!…ったく… 」
その時の遥斗の顔は楽しそうだった。
そう、その時は_…
今回はここで区切ります