【1時限目 〜ニンゲンモドキ〜】
私は迷っていた。
街角で鳴く同族。そこらの三毛猫と変わらぬ生い立ちにして、
200近くの冬を越えて来た私。
その私が、生まれて初めてニンゲンごときに狼狽(ろうばい)していた。
ニンゲン、か弱いものである。
何故(なぜ)かなど考えたくもないが、
暑さ寒さから、あるいは外敵の鋭いキバから守ってくれていた毛皮を、自ら脱ぎ捨て、
我が物顔でこの世を練り歩く勘違いも甚だしい気狂いである。
別段、美味なわけでもないので狩りはせぬが、
少しでも危害を加えるようなら嬲り殺してくれようかと考えていたところだ。
そうして今この状況に立ち返るに、はて、私の前には確かにニンゲンがいる。
危害を加えられたかといえば2、3回殴られたので加えられたのであろう。
なにより私の散歩道のド真ん中に横たわるなど至極失礼であり、
八つ裂きにされてもいたしかたない愚行である。が、
「だぅ〜ぅーぁー」
はてさて、これはニンゲンであろうか。