貧相な手足。縦長の顔。頭部に申し訳なく生える毛。
なるほど、たしかにニンゲンのように見える。
「あー? あー……あぅ!」
しかし、それにしては幾分(いくぶん)か小さい。
私の知るニンゲンはこんな小型ではなかった。
さらに言えば話している言語が違うようである。
あーあーと何やら高い音域の言葉を繰り返し発している。
低いドスの効いた他の個体とはその点で一線を画しているともいえるが、私が考えるに、このニンゲンは我々の崇高なる猫語を解そうとしていると見た。
なんと。下っ端の猫より跳躍力の無い劣等種のそれに鳴き声を真似られるとは……。
ひどく腹立たしいが、同時に興味深くもある。
やっと彼らも自らの傲慢さを恥じるだけの知性を身に着けたのかと思うとどこか感慨深い。
「ぁ……ぁ?」
どれ、1つお手本に鳴いてやろうか。
「ぐぁぁ〜ぉお……」
「…………ぁ?」
駄目だ。「こみゅにけーしょん」というものを理解していない。所詮サルのようだ。