真の暗闇が支配する道。
「そうか」
少年は初めて声をあげた。
「私が生きた意味は、これだったんだ」
狭い空間に響いた自分の声を聞きながら、彼は這う速度を上げた。
少年は道を這って進んでいる。
そうするしかないほどに狭いのだ。四方に壁が迫り、一切の光が遮断されている道である。勿論音もない。
何も見えない。
何も聴こえない。
目的地までの距離も分からないまま、ただ狭く真っ暗な道を這っている。
こんな状況下で平静を保つにはどうすればよいか。
考えあぐねた少年は遂に結論に達した。
ひたすら独り言を言い続けること。
何でも良いから静寂を作らないこと。
一度方法を思いついてしまえば案外簡単なもので、後は自然と言葉が口をついて出てきてしまう。
「イザークだったら、もっとましな方法を思い付くのだろうね」
少年は友人の名を挙げ、自嘲気味に笑った。
そして出来る限り詳細にその姿を思い浮かべる。
幼い頃からずっと一緒に過ごした友人だ。すぐに思い描くことが出来た。想像上の友人は笑顔で立っている。
すると少年の気持ちも少し落ち着いてきた。
「私はね、教皇になんかなれなくたってもう構わないんだよ」
大きく息を吸い込み、「だって」と続ける。
「私は真実を求めてこの道を進んでいる、これだけでもう十分じゃないか」
友人を頭に思い浮かべたまま、まるで彼に同意を求めるかのように少年は言った。