自分の息が徐々に荒くなってくるのを感じる。だが身体の疲労とは対照的に、少年は言葉を止めることが出来なかった。
「ねえイザーク、君も今こうして道を這っているのだろう?」
無論その問いかけへの答えは無い。
「皆んなも唖然としていたね。まさか『コンクレンツァ』の内容がこんなことだっただなんて」
数時間前のことを思い返し、少年は大きく息を吐いた。
あの時。
自らの後継候補である、齢15になる35人の少年達を前にして、年老いた教皇は言った。
「そして覚えておきなさい」
彼らは口を固く結んだまま次の言葉を待った。これから行われることへの緊張からか、誰もが顔を青ざめさせている。
教皇はそんな少年達一人一人と目を合わせてから、静かにこう告げた。
「コンクレンツァに敗れた者は魂を失うのです」
誰も声をあげなかった。
声を上げることすら出来なかったと言う方が正しい。