「おはようございます。わたしの名前は、三木優子です。よろしくお願いしまーす!」
すると、隣の席の男の子が挙手して声を上げた。
「優子先生は彼氏いるんですかぁ?」
「結婚してます」
結婚という単語を聞いてふて腐れたのか、ボーッとしている。
周りの男の子がその姿を冷やかした。
「お前、三木先生のこと好きなの〜?」
否定も肯定もしない。
前の席の子が振り返ってクスクス笑う。胸元の名札を見ると、『高木くるみ』と書いてある。
「莉乃ちゃんの隣、くるみと同じ小学校。うるさいから気を付けてね」
こっそり隣の子の制服の胸元を見てみる。
『笹橋直哉』。
小学校の時の全国模試上位の人だ!
笹橋くんもここの学校なんだ…。
「なあ、くるみ!お前の後ろの女子の名前、何!さっきからコソコソ話してるけど!」
なっ…!
その言い方は何よ!
お前の後ろの女子って!
笹橋くんの隣の席の女子でいいでしょ〜!?
「自分で声かけて聞きなよ〜」
チッと舌打ちし、めんどくさそうに体をこちらに傾ける。
うっ、目力強いな…。
「俺は笹橋直哉!お前は?」
いっ、いきなり!
ちょっとたじろぎながら、簡単に自己紹介をする。
すると、笹橋くんは目を見開いて声を張り上げた。
「お前、紅城病院の娘?」
「え、まあ…」
「すっげえ!お嬢様じゃんー!!」
笹橋くん、果てしなくうるさい…。
周りの子も笹橋くんの話に反応して好き勝手に声を上げる。
「えっ、まじ!?やばー!」
三木先生も困っている。
うう…いきなり困ったもんだ…。