来た道を戻る。
ママとパパはもう仕事。
ママは外科医でいながらも社長であるパパの相棒的存在。
秘書みたいなイメージ。
パパも外科医でいながらも社長。
れっきとした紅城医療総合病院のね。
たしか、ママもパパも脳外科だった気がする。
変わるとか言う話も聞いたことあるけどね。
「大輝!ちょっと!」
後ろからパタパタと数人の足音が聞こえて振り返る。
先輩だ…。
「この子誰?浮気!?」
「違うよ夏美。幼なじみの莉乃。両親が仕事だから一緒に帰るの。初めてだから」
多少むくれながら引き返す先輩たち。
大輝くんもそそくさと先を行ってしまう。
わたしはあわてて追いかけた。
「ねえ大輝くん。わたしはいいから、あの先輩たちのところ…」
「いいから。俺、あいつきらいだし」
え…?
浮気ってことだから、付き合ってるんじゃないの?
てっきりデートでもすっぽかしたのかと…。
「あいつは性格わりぃから気を付けろよ。東条夏美」
東条先輩か…。
たしかに目力はすごかったもんな。
話題を変えたくてたまらないと言ったような大輝くんが笑いかける。
「うち帰ってもひとりでしょ?母さんも喜ぶからうち来ない?」
「ごめん…。勉強しなきゃいけないことがいっぱいあって…」
「教えるよ」
わたしはブンブンと首を横に振る。
もう、超高速で。
キョトンとしている大輝くん。
わたしは説明した。
「医療のことだから…」
「じゃあ分かんないや。ごめん」
気づかいには感謝してペコリとお辞儀する。
すると、大輝くんが「やべっ」と言いながら走る。
「えっ?ねえ、何!?」
「電車!」
乗り遅れるってこと!?
やばい〜!
スクールバッグを強く握ってホームへ。ホームから電車内へ…。
ゼーハーゼーハーだよ…。
「大丈夫?」
「うん…!だい…丈夫…!」
こんな生活はきついかも〜!