「7番、斎藤愛歌さん」
「―――はい」
決意のこもった、しっかりとした声で返事する愛歌。その瞬間、会場内に異様な雰囲気が漂い、空気が重くなる。
……それくらい、愛歌は本気だったのだ。自分の夢を叶える事、に。
「アイドルになりたい、と思った理由は?」
「歌が好きだからです!」
面接官の堅い雰囲気に屈することなく、鋭い眼光で質問に答える愛歌に、審査員は最早感心していた。
「今時、ここまで一途な学生はいるのか」、と。そして、彼女のただならぬ目付きに。
「失礼ですが、『自分を見てもらいたい』と思った事は……」
「ありません!」
―――私は歌を歌いたい、だからアイドルになりたい、自惚れてなんかいない。
はきはきとした声で愛歌は話し切り、遂には面接官までも感心させ、オーディションを終えた。