『骨喰い』。
この『町』に伝わるおとぎ話であり、都市伝説のようなものである。
読んで字のごとく『骨を喰う者』という意味で、かなり昔には実際に存在していたと言われている。その記録は多岐にわたり、中にはあまりのリアルさや情報量の多さにその事実性を認めざるを得ないものもある。
そのグロテスクな内容にもかかわらず、どんなに幼い子供でも『町』の人間で知らない者はいなかった。
しかしそれはあくまで『おはなし』であって、完全に信じる者は少なく、子供を夜に出歩かせないための安全装置のような役割だったはずである。
「それ、あげるね。君のポケットに入ってたから」
イギーの手が口もとから離れて割れたスープ皿を片付け始めても、墓泥棒改め骨喰いは身動きひとつせずに黙ってそれを見つめるだけだった。
一通り大きな破片を一箇所に集めてしまうと、足にかかったスープを袖で拭って、彼はもう一度顔を上げた。
「……それと、僕はここの墓守。『町』の人達とは違うから、君を虐めたりするつもりはないよ。安心して」
骨喰いにつけられた傷は明らかに人為的なものだ。先程の淡々とした口調をごまかすように優しく、ゆっくりと語る。そしてやおら立ち上がると、相手の頭に手を伸ばした。
「ッるせえよ!」
「!」
その手を勢いよく払って狂暴な獣のように牙を剥く。急に動いたおかげで脇腹に鋭い痛みが走り、表情が歪んだ。
「信じられるわけねぇだろうが! ここから出せ!」
「……ごめん。でも、どのみちその足じゃあ無理でしょ?」
視線で示された先には、包帯を巻かれ添え木をされた両足がある。右足は辛うじて動かすことができるが、左足は完全に骨折しているだろう。
「……チッ」
「君も僕も『町』の人にはあまり会わない方がいいよね。完全に治るまではここにいなよ。少なくとも最低限の衣食住は提供できるからさ」
そう言って布団をかけ直されてしまえば、とんでもなく不本意ながら、骨喰いには何も言い返すことはできないのだった。
初期のやつ投稿してた。
最初の情報過多ナレーションは忘れてください。
このくらい減ります↓
『骨喰い』。
この『町』の人間なら誰もが知っている言葉である。
読んで字のごとく『骨を喰う者』という意味で、そのグロテスクな内容にもかかわらず、その逸話はどんなに幼い子供でも知らない者はいない。