手を伸ばせはいつだって甘いものをくれたママ。ママの匂いは甘くて優しかった。
甘いものが好きな私と反対に甘いものが嫌いな簾
ママが死んでからは毎日が
まるでブラックコーヒーの様に
〜苦い〜
「何が苦いって?」
ただ外を眺めていたら終わってしまった授業のあとお菓子と勉強道具を鞄に詰めようとすると愛がこちらを向き尋ねてきた。
「ん〜、別に何でもない」
「あっそ、あと今日委員会で遅くなるけど……心先帰っててもいいよ」
別に用事はないが何となくまだ学校に居たい。愛が迷惑するかもしれないがそれなら一緒に帰った方がいいだろう。
「一緒に帰る」
そうぶっきらぼうに伝えると目の前にいる彼女はあきれたように笑う。
「了解、じゃぁ行ってくるね」
そう言いながら慌ただしく教室を後にする愛の後ろ姿に聞こえるか聞こえないかの声をかける。
「いってらっしゃい」
誰も居なくなった教室は昼間の喧騒がまるで嘘のように静かだ。そのまま机にうつ伏せになる。遠くから聞こえる運動部の声と吹奏楽部の音が混ざりあい不協和音を奏でる。
「五月蠅いな……」
そう呟くとまるでタイミングを見計らったように教室の扉が開く。
「あれ、珍しいね、心ちゃんが残ってるなんて」
男の子にしては少し高い声に中性的な容姿の彼は驚いた様に目を細めながら私を見る。
「愛を待ってるだけだよ、琉生君」
うつ伏せにしていた体を起こしながらドアの方を見ながら答える。
「あっ、そうだ心ちゃんってさ、簾君のこと好きなの?」