俺は、クラスメイトに嫌われている。いじめられてるわけじゃないけど。
嫌われてるっていうのは訂正して、煙たがられているっていう方が正しいかな。
そりゃそうだろう。野暮ったい髪を伸ばして顔を見せず、そして誰とも話さずにいる男子中学生と関わりたい物好きがいるはずがない。
髪の毛は今のところ切る予定はない。面倒だし、切ったところでクラスメイトの反応が良くなるなんて保証は無い。まぁ、俺も気にしてないしね。視界が見えないっていうのは結構気楽なんだよ。
唯一、親友と呼べる奴はいる。名前は、河ア 奏佑。
信頼できる奴だ。ただ、アイツはこんな俺と違って超イケメンだし、友人も幅広い。正直、どうして俺の親友なのがもったいないくらいだ。
クラスメイトに煙たがられている俺に、何も取り繕うことなく話しかけてきたのが奏佑だった。
「よっ!お前、名前なんていうの?」
こんな風に気軽に。周りのクラスメイトがギョッとしてたよ。
まぁ、それから、よく話すようになって、今は親友だ。
……親友ができてもクラスメイト達の反応は変わらなかったが。
俺も、変わりたいとは思ってるんだ。視界が狭くて落ち着くって考えも、所詮は現実から逃げているだけだろ?
でも、きっかけが掴めなくて、ウジウジしてる。
そんな俺、水瀬 透羽に転機が訪れたのは、中学三年の二月のことだった_______。