次の日。
部活終了時刻となったので部員を帰らせて今俺は一人で準備室の前に立っている。
ガチャり、キー…っと錆び付いた金属の音が耳に入る。
埃っぽい室内は棚の中にしまわれている圧倒的な量の画集で満ちていた。
「すごい…これ全部、とっといてくれてたんだ……」
見回してふと一つのキャンバスがはみ出ているのが見えた。
そこに歩み寄り指に引っ掛けると埃が舞って咳き込んでしまった。
「けほっ…ん? なに、これ…すごい…」
そこに描かれていたのは一輪の向日葵と一足の靴であった。
シンプルでしかし意味の分からないこういうものは俺の好みで。他人が目を向けないような絵画が好きでよく変人と呼ばれていた。
「これ誰が描いたんだろう…」
キャンバスの後ろを見ると薄くなっているが恐らく描いた人であろう名前が書いてあった。
「m…a…i…まい、さんか」
明日先輩にでも聞いてみようと脳内にその名前をメモしてキャンバスを元に戻して準備室をあとにした。