僕は我慢の限界だった。とにかくこの謎な状況を何とかしないと。
「…"アノ人"は帰って来ない?"選ばれた人間"って何?…いや、そもそも君は何? 解らないことが多過ぎるよ。」
「…あ、いや…うん。説明不足、だった…な。申し訳ない。だが、その前に、"いつもの"…くれないか?」
おずおずと言い出すリオンに、悪かったかもと思った矢先、"いつもの"…僕のごはん、メロンパンのおねだり?
…悔しいが、7、8歳位の猫耳少年はかなり可愛かった。上目使いで首をこてん、とやられれば勝てる訳がない。
「…まぁ、良いけど?ちゃんと話してくれるんでしょうねぇ…」
何だか、普通にリオンに話し掛けている気分だ。不思議と、少し笑ってしまった。
僕は"アノ人"が唯一くれる食べ物(エサ)、メロンパンを持って来ようと立ち上がった。身体が重いし、ふらつく。
危なっかしく雑誌の山だの服だのを踏み付け、ゴミの海を掻き分け、コンビニ袋を引っ張り出した。
そこからメロンパンを出して渡すと、リオンは嬉しそうな顔をして、半分可笑しそうに言った。
「一応言うが、普通の猫はメロンパン食べないからなぁ?そもそもここから変だと思って欲しかったものだねw」
「…えぇ、そうなの⁉ 知らなかった〜。あ、全部あげるよ?」
「いや、どうせオマエはオレが来ないと何も食べてないだろ。ほら、半分。」
「…ありがとう…」
リオンの言う通り。僕はリオンが来て、"いつもの!"といった…上目使いに首こて。
そう、今の感じでねだられない限りはまず、メロンパン自体を出さない。というよりか…出しても食べられないのだ。
「…んむ、はむ…♡」幸せそうに食べるリオンを見ると、自分も何故か食べられる。「…!」いつもより美味しい。
…まだ何も解決していないというのに、ただただ幸せだった。