「ただいま」も言わずに、靴を脱ぎ捨て、すぐに自室へ向かう。
今日は非常に眠かった。
私の足音に気がついたのか母がこちらを向く。
「あら、帰ってたのね。おかえり」
「ただいま」
私は無愛想に答え、自室のドアを開ける。
私はいつもは真っ先に宿題をする派なのだが今日は真っ先にベッドに倒れこむ。
倒れこんだ瞬間、一気に眠気は襲ってきた。
意識がぼんやりとしていき、私は寝た。
「………い……おーい。聞こえてんのかー?」
誰かが私に呼びかけてるような気がした。
体を起こし、誰かを確認する。
「……ぬいぐるみ?」
右耳は破れ、継ぎはぎのクマのぬいぐるみがボタンの目で私を見つめていた。
あ、これは夢だな。私はすぐに気がついた。
「ぬいぐるみじゃなーーーーーい!!!おれは悪魔だ。次、ぬいぐるみだなんて呼んだら、どうなるか分かってんだろ
うな?」
「悪魔…?」
クマは誇らしげに話した。
「そうさ、おれは悪魔なんだ。夢の中のわっるーい、悪魔さ。おれたち悪魔はテキトーに人を選んで、夢の中に連れ去
り、夢の中に閉じ込めてしまうんだ。お前は運が悪かったな。
あ、いいことを教えてやろう。おれたちが命令を出す。その命令に全部従えたら、出してやるよ」
「おれたち」ということは他にも悪魔が複数いるのだろうか?
夢の中に連れ去った?もし「命令」とやらに従えなければ――――。
「命令に従えなかったらどうなるの……?」
「おっと、物好きだねぇお嬢ちゃん。従えなかったら―――――
死んでもらうよ」
「し、死ぬ?夢の中で?」
「夢の中だから大丈夫だと思ったか?もう二度と目を覚まさなくなるよ。
だからせいぜい頑張ってね。
おっと、言い忘れた。閉じ込められてるのはあんただけじゃないよ。だから協力して頑張るんだね。
さ、他のやつらはこっちにいるから――――」
とクマは言い。私を暗闇に突き落とした。