「これ、あなたの分ね」
「あ、ありがとうございます」
女性教師から青い剣と、剣をしまう為のベルトを貰った恵那は、怪訝そうな表情でそれらを凝視する。
……ダサすぎる。
率直な感想だった。持ち手が黒くて、刃の部分が青い剣もダサいが、腰につけるベルトもベルトだ。ベルトの色は、茶色っぽいオレンジだったが、悪目立ちする。
貰ったその瞬間に、剣もベルトも装着しなければならないらしい。恵那も、他の新入生も、嫌そうな顔をしながら、腰につけたベルトに、剣を下げた。
そして、自分の靴箱に靴を入れ、事前に貰っていたクラスと出席番号、教室の場所が書いてある髪を見ながら、恵那は教室に向かう。
その途中、恵那はふと窓から学校の外を見てみた。そこには、真っ黒な倉庫のような、四角い建物があって、所々黒色ではなく、青色が見えているから、ペンキで塗ったのだろうか。
「うっわあ……」
あまりのダサさに、恵那はドン引きしていた。恵那につられて外を見ていた他の新入生達も、同じようにドン引きしていた。
あの建物は、多分ブラックとかいう意味の分からない集団のアジト的な場所だろう。誰もが、そう判断していたから。よく見てみれば、黒い人影がうようよ動いている気がして、恵那は吐きそうになった。
あまりにもインパクトが大きすぎて、暫く見入ってしまっていた恵那だったが、学校に着いた時間が集合時間の割とギリギリだった事を思い出し、早足で自分の教室に入って行った。
教室に入ると、どのクラスメイトも自分と同じように腰から青い剣をぶら下げていて、恵那は思わず吹き出しそうになったが、空気を読んでそれを堪える。
黒板に貼り付けてあった座席表を見て、恵那が自分の席に座ると、隣の席の、ツインテールの女子生徒が、恵那に声をかけた。
「あたし、姫川 麻湖(ひめかわ まこ)! 隣の席だから、挨拶しときたくて。よろしくね!」
麻湖と名乗った彼女は、一言で表せばとても元気の良い人物だった。
「立花恵那。よろしく」
恵那はそう返して、鞄の持ち手を机に引っ掛けた。そして、自分の腰を見て、顔を歪める。
「座ってる時もつけるとか……」
そう、この青い剣はヘンテコだったが、妙に重さはあった。片方だけに重心がかかるので、腰の負担はかなり大きい。バランスの悪い身体になりそうだと、恵那は思う。
その後、恵那は、この学校には体育館等で行う、所謂入学式が無いので、隣の席の麻湖と、主にブラックと青い剣についての愚痴で会話を弾ませながら、担任の教師が教室に入って来るまで過ごしていた。