>>279 ありがとう!👼♥
「ねえ、和田は何しに来たの?」
フードコートを出ると、緩莓が首を傾げながら和田にそう訊ねた。
「いや、暇つぶしに来ただけ」
「前から思ってたけど、和田って意外と行動力あるよね」
緩莓が少しいたずらっぽく笑う。
「たしかに、行動力だけはあるよな〜」
俺も同調してそう言うと、和田は口をとんがらせた。
「お前ら二人揃って腹黒いな、ブラックコンビ」
「腹黒いのは和田の方でしょ…」
和田の方を向きながら喋っていた緩莓が、前の下り階段に気づかず落ちそうになった。
「わ…」
「あぶねっ!」
俺と和田が同時に緩莓の腕を掴んだ。
緩莓は落ちずに済んだが、三人して尻もちをついてしまった。
「ごめん、ありがとう」
緩莓が手を合わせながら謝った。
「お前はほんと馬鹿だなあ、よそ見危ねーぞ」
和田が緩莓を指差しながら言った。
「馬鹿って…言い方悪いなあ」
緩莓がしゅんとする。
「わぁった!わぁったから!お前は馬鹿じゃない天才だ!」
「とりあえず立とっか」
まだ尻もちをついたままの二人に声をかける。
「わ、ごめんねみっちゃん」
緩莓がすっくと立ち上がった。
「お前ほんと三橋のこと好きなー」
和田が茶化した。
「そ…そういう和田は好きな子いないの?」
「たしかに。俺も気になる」
じーっと見つめると、和田は照れているのを隠すように頭をかいた。
「い…いねぇよ」
「え〜、ほんと?」
緩莓がにやりと笑いながら和田の顔を覗き込んだ。
「ほんとにいないの?今日はエイプリルフールじゃないよ」
「う…」
和田が耳まで真っ赤にして小さく唸った。
「ご想像にお任せします」
「ちぇ〜」
緩莓がつまらなそうに口をとんがらせた。
こうやって話している間にも、通り過ぎる人たちが振り向いて緩莓を見ている。
さっきのタピオカ店で騒いでたJKも、緩莓のことを見ている。
「そういえば、お前姉ちゃんいるよな?」
階段を降りながら和田が緩莓に訊ねた。
「いるよ。今は外国に留学してるけどね」
「留学⁉すげーな、俺の姉ちゃんなんてチャラチャラしてばっかなのに。同い年でもこんなに差があるもんなんだな〜」
どうやら緩莓のお姉さんと和田のお姉さんは同い年らしい。
「…ねえ、みっちゃん、和田」
階段を降りてから、緩莓は足を止めた。
「ん?どした」
そう訊ねると、緩莓は少し寂しそうな表情をしながら、潤んだ瞳で見つめてきた。
「…次、会えるのはいつだろうね」
寂しそうに笑った緩莓を見たら、胸が締め付けられた。
「大丈夫。またすぐ会えるよ。それまでの時間なんてあっという間だよ」
そう優しく言うと、緩莓は微笑んだ。
「…俺さあ、思うんだけど…」
和田が口を開いた。
「お前らほんとに付き合ってないのか?」
何か名言らしきものを期待していた俺は拍子抜けしてしまった。
だけど、和田の表情はいたって真剣だ。
「つっ、つつつ付き合ってるわけないじゃん〜ねぇみっちゃん」
緩莓に背中を叩かれた。
「俺らの秘密なんか、お前みたいなゴリラに教えるもんか!」
「あ゛!?」
「あー、やっぱり二人とも面白い」
手を叩きながら笑う緩莓と、和田を挑発しつつ逃げる俺と、俺を追いかけ回す和田。
はたからみたらただの変な三人組って思われそうだけど、そんなのちっとも気にならない。