──先生、今月の原稿確認できました! お疲れ様でした。
そう書かれたメールを受信し、私はほっと胸を撫で下ろした。
「あ〜締め切り間に合ったぁっ!」
花織 恋種(はなおり こたね)、今年で高校2年生。
中学の時に描いたネット小説から始まり、今では書籍化3本を出すまでの作家になった。
雑誌でも何ページか頂いて連載させてもらって、おばあちゃんの年金に頼らずとも生活できるレベルだ。
「徹夜明けはキツいけど……学校は休めないな」
私が無理してまで小説を描いているのは、おばあちゃんの為だ。
幼い頃に爆発事故で両親を失い、私はおばあちゃんに引き取られた。
二人の遺産とおばあちゃんの年金でなんとかやってきたけど、私が就職するまでに貯蓄はもたない。
だから少し無理してでも、今のうちにお金を稼ぐ必要があった。
おばあちゃんは快く承諾してくれたし、印税もそこそこ入っているので順調だ。
眠い目を擦ってトーストを喉に詰め込み、いつも通りローファーに足を通して戸を開ける。
雀も元気にさえずる程の気持ちい良い晴天だ。
「おばーちゃん、いってきまーす! 今日出版社で打ち合わせあるから遅くなる!」
「恋種、気をつけてね〜!」
優しいおばあちゃんの声に送り出されながら、緩やかな坂を早足で下って行った。