【episode01】
──私、右城茜子は平凡な日々に飽き飽きしていた。
誰だって飽きていると思う。
みんな言わないだけで、心のどこかで刺激を求めてる。
それはヒーローに変身したり、スパイとして戦いに挑んでみたり。
「高2の夏休みも終わったワケだけどさ? 結局、怪人が現れてかわいい女の子に変身ベルト託されて……みたいな夏はなかったワケだよ」
「茜子は相変わらず特撮の見すぎね」
新学期の朝、夏休みロスでブルーな私を一蹴するのは隣の席の姫岡瞑(ひめおか つむり)ちゃん。
超がつくほどの現実主義(リアリズム)者の癖に、少女漫画みたいな王子様が現われるのを待っているシンデレラ症候群(シンドローム)だったりする。
「怪人だのヒーローだの現われるワケないじゃん、馬鹿らしい」
「背が高くってイケメンでイケボで頭も良くて料理もできて運動神経抜群で礼儀正しいスパダリもなかなかだと思うけど!?」
「はぁ〜? 怪人と一緒にしないでよ」
「いやぁ怪人が現われる確率より低いんじゃない?」
「ま、私だって本気でそんな男待ってるわけじゃないんだけどね」
現実に打ちのめされていた、高二の夏休み。
そんな私と瞑ちゃんの諦めていた刺激的な日々は、ある男によって現実となる──。