きっかけは前触れもなくやってきた。
女子大を卒業して、とある会社に就職した私は、
この日、新人の仕事として、先輩と一緒に営業先を回ったのだった。
仕事自体は特に問題はなく、そのまま私は先輩と別れ、
自宅に向かうバスへと乗り込んだ。
ここまではよかった。
ところが、バスが発車してしばらくしたときである。
「ぐるぐるぐる」
最初はお腹が鳴っただけだと思った。
しかし、それからすぐ、そのお腹に強烈な痛みが襲ってきたのだ。
慣れない仕事からくる緊張感から解放されたせいだろうか。
それとも、普通の生理現象だろうか。
要は、私は帰りのバスの中で猛烈にうんちがしたくなってしまったのだ。
私は今すぐにでもトイレに駆け込みたかった。
しかし、そこはバスの中である。トイレなどあるはずもない。
途中のバス停で降りようかとも思ったが、
次のバスを待たなければならないし、
トイレがどこにあるのか分からない。
その結果、私は自分が降りるバス停まで、我慢する選択をしたのだ。
帰り道の公園にトイレがあるのは知っている。
もう少しなら我慢できそうだし、
知っている場所を使った方が確実だと思ったからだ。
私は必至で便意を耐えた。しかし、思わぬ誤算があった。
バスが渋滞に巻き込まれたのだ。
私は焦った。途中、二回ほど本当にやばい時があった。
少しでも力を緩めれば、スカートの中をトイレにしてしまう。
体はじっとしているが、心の中では大声で叫ぶ。はやく動いてと。
それは祈りにも近い感覚だ。
しかし、それでも私は耐えきった。
目的地のバス停についたときは、本当に天に昇るかのようであった。
あとは近くの公園に行けさえすればいい。
私はお腹を押さえて、一歩一歩ゆっくりと歩き出した。
足を出すたびにお腹に衝撃が響く。
そのかわり、公園の入り口が少しずつ近づいてくる。
あと少し、あと少しで、うんちが……。
そして、私はついにたどり着いたのだ。天国への入り口に。
勝った。私はお腹に勝ったのだ。
あとはトイレに向かって思い切りうんちを……。