しかし、トイレの前まで来た時である。
私は天国から地獄に落とされた。
なんと、そのトイレが工事中で閉鎖されていたのだ。
うそだ……。そうだ、これは夢なのだ。
夢から覚めればトイレは空いていて、私はそこで……。
しかし、これは夢ではなかった。間違いなくトイレは閉まっているのだ。
終わった……。
こんなことなら途中でバスを降りればよかった。
もう我慢できない。漏らすのは時間の問題だ。
私は泣き出しそうになった。まさか大人になってうんちを漏らすことになろうとは……。
これでも、女子大では合唱部に入って、清らかな歌を歌ってたのに。
残念ながら今日でそれも終わりらしい。
さようなら私の清らかな人生……。
しかし、そのときであった。
私がふと目を向けると、一筋の救いだろうか、
公園の隅に小さな茂みがあったのだ。
それを見た瞬間、私は思った。あそこまでなら何とか間に合うと。
しかし、しかしである。それは外でうんちをするということだ。
さすがにそれは……。
23歳の大人の女性として、外でトイレはやはり問題だろう。
そもそも、人が来たらそれこそ人生終わりだ。
やっぱり家まで頑張ろう……。
私がそう思った時である。
「ぎゅるるるる」
お腹が最後の悲鳴をあげたのだ。
「あぁぁ、も、もう、だめ……」
私はいつのまにか、茂みに向かって走り出し、
気づいた時にはそこにしゃがみこんで、無我夢中でうんちしていた。
公園中に音が鳴り響いていたが、もはやそんなことを気にしている余裕はなかった。
とにかく、お腹の中のものを出したくて仕方がなかったからだ。
幸い公園には誰もおらず、私は見られずに済んだのだった。
「はあ、はあ、はぁ」
用をたすと、私は天国に昇るような気持ちなった。
よかった。どうやら私は漏らさずに済んだらしい。
お腹の痛みが嘘のようになくなっていく。
しかし、現実は厳しい。新たな問題が容赦なく襲い掛かる。
お尻をふいて立ち上がると、当然だが、
地面の上には、どっさりと私の落し物が山になっていた。
なんという量だろうか。体のどこにこんなものが……。
これが私がやってしまった行為の真相である。
私は生まれて初めて外でしてしまったのだ。それも大人になって。
お腹がすっきりすると、私はとたんに恥ずかしさが込み上げてきた。
それに、このうずたかく積まれた茶色い山をどうすればいいのだろうか。
声が聞こえたのはそんなときだ。
私は足がちぎれんばかりに走った。
こんなに全力で走ったのはいつ以来だろう。
それでも私は走った。