第2話「最も好かれる顔」
男は生まれてこのかた一度も付き合ったことがなかった。それどころか、まともに会話したこともほとんどない。彼は生徒の頃から、母親以外の女性に何もされてこなかったのである。多少、いじられたりしていれば彼の現状も少しはマシであったろう。だが、石ころのように扱われるというのはいじられるより深い傷を負わせることがある。
彼は、女性に相手にされず、また自分からぶつかりに行こうともしなかった。その理由はコンプレックスがあったからである。彼の風貌は清潔感がなく、腐りかけのモヤシのようであった。手入れをしないものだから中の下ほどのルックスもより酷いものに見えた。これだから、生徒時代も意地悪をする勇気のある女子が出てこなかったのである。
彼は自身が女性に相手にされないのは女性のせいだと思っていた。まず、このような顔に産んだのは母親であり、母親は女性だ。そして顔でしか判断しない女性も悪である。それが彼の考えであった。もっとも、顔だけで判断している女性など少数派なのだが。
少なくとも彼は、顔がすべての原因であるので顔をなんとかしようと考えていた。「女なんて」が口癖の彼であるが、流石に魔法使いにはなりたくなかった。だが、彼には清潔感を保つ根気も整形する金もなかった。そこで彼はネットに頼ることにした。「溺れるものは藁をも掴む」とはこのことだと冷笑するものもいたが、なんと彼は整形より安く顔を変える機械を発見したのである。
そのページは最終更新日が10年以上前であった。背景や説明文も怪しかった。何より、ページ管理人兼開発者が全く無名の人物なのである。しかし、彼は特に何も考えず、
「これで俺も勝ち組」
と言って購入したのである。
驚いたことに、目当ての商品はきちんと彼の元に届いた。その商品には「最新のAIがあなたを女性が一番好きな男性の顔を判別、この機械が整形してくれます。これであなたもモテモテ(麻酔付属)」と古臭い字体で書かれていた。彼は早速、この機械を組み立て、顔に被せ、麻酔をした。決して器用ではない彼であったがこの時ばかりはトントン拍子で作業が進んだ。
整形作業から数時間、彼はついに目を覚ました。顔を触ってみると、前とは違う感触がする。彼は自分がモテモテの勝ち組になったことを確信した。そして、ステージ上で多数の女性の前で脚光をあびる自分を想像しながら、眠りについた。
その後、彼の願望は半分だけ達成された。その年のモノマネ番組で「一万円札の肖像画のそっくりさん」として登場したのである。
やっぱり人間お金がスキだ〜〜って心理が表されていて、その、スキッス(´・ω・`)(語彙力)