──ラルテル・フィーシェは、ラシャレー王国という小さな島国の名将軍であった。
その部下であるアシメアは、彼を嫌悪はすれども軽蔑はしなかった。
むしろ尊敬していた。
主に海戦を得意とし、2万の大軍に対し8000の軍で挑み、戦力差をひっくり返して勝利を収める知略の天才。
気候や地形を熟知し、自然現象を味方につけ、斬新な戦法を切り拓く。
4ヶ国語を操り、知識や教養にも富み、外交にも強い。
ラルテル率いる8000のラシャレー王国軍と戦うより、2万の他国軍を相手にする方がマシだとスペイン王にさえ思わせた男だ。
若干25歳にして大佐に抜擢されたのも、アシメアは嫉妬はしたものの、疑問は無かった。
「陸の戦いは軍事力のある方が勝つ。海の戦いは頭の良い方が勝つ」
ラルテルは地図を広げて戦略を考える際、いつもそう言っていた。