そんな逸材ラルテルだが、彼は国王アメレス2世に忌み嫌われていた。
初めは素晴らしい戦績を残したことで王に気に入られていたものの、ラルテルは民衆の味方に徹し、税の徴収額が重すぎると抗議したからである。
もともと裕福ではない家庭から上り詰めたため、民主からも慕われていたラルテルにはその負担がいかに辛いかよく分かっていたからだ。
とにかくラルテルに嫉妬していたアシメアは、その状況を利用した。
ラルテルに不満を持つ王を味方につけられるかもしれないと踏み、ある讒言を創り上げることを持ちかけた。
それは、ラルテルが隣国に軍事情報を漏洩させているという罪をでっち上げ、島流しの刑にするという算段だった。
隣国に婚約者を持っていたことが幸いして信憑性も高まり、次第に軍や民衆のの信用を勝ち取ることに成功した。
ラルテルは、流刑となった。
死刑にしなかったのは、彼を慕う貧乏民が暴動を起こさないようにと配慮したからである。
彼らは地理に疎いので、島流しであればいつか戻ってくると信じて大人しく待ってくれる。
とはいえ、彼の流された島は、フィーシェ王国の位置するヨーロッパへ泳いで帰れるほどの距離ではない。
新しく発見されたアメリカ大陸付近の、小さな孤島である。
周囲に島はない上に害獣も多く、さらに野蛮な原住民がいる。
以前探索に派遣された使節団は、原住民に攻撃を受けて引き返したという記録がある。
たとえ島に辿り着いたとしても原住民に侵略者として殺される。
いくらラルテルとはいえど、未曾有の地の言語で意思疎通することはできないだろうと、王とアシメアは嘲笑っていた。
フィーシェ王国✕
ラシャレー王国〇