『もう事件の記事見るのやめてよくろ〜!私くろが刑務所に行っちゃうの嫌だぁぁあ! 復讐なんてしなぐでいーからあ゛ぁあ!』
「げっ」
あまりの大声に、思わず声を漏らしてしまう。
彼女は周囲の人に聞こえないのをいいことに、声帯の限りを尽くして喚き散らした。
一応幽霊同士は存在を認識することなく、互いの姿も声も聞こえないらしいのだが、その存在を認識できてしまう私にとってはうるさくて適わない。
基本的に霊はそれを自覚しているからか、いくら声を出してもいいと思って大声で歌ったりする。
霊が見えるようになった当初は不思議な力を手に入れたと興奮の絶頂にあったけど、こういうデメリットもあるので萎えた。
空気中を振動して出す声ではないからなのか、耳栓しても幽霊の声が聞こえるのはかなり不便だ。
──ごめん、もう少し静かにしてくれる?
声を出すわけにもいかず、私はそう走り書きしたメモを女の子の前へ掲げて見せた。
幸いにも福司君の目は下に落とされたままなので、こちらに気づいていない。
『え、私のこと見えるんですか!?』
何十回と見たリアクションに心底うんざりしながら、軽くこくりと頷いた。