T章 〜世界一最悪な入学式〜
──この世界は大きく分けて三つの大陸に別れている。
世界一の領土を持つアルテック帝国と、その他15の小国で編成されているイーストランド。
大国三つから成るサウスランド。
ひとつの大きな島で出来たノースランド。
私が生まれたのは、イーストランドから少し離れた小さな島国 ジュレース公国。
長らく大陸と隔離されていた為、大陸の国々とは異なる独自の文化や言語が特徴的だ。
100年ほど前からイーストランドの国々と交流を持つようになり、この島でもイーストランドの共通言語であるアルテック語を話す者も増えてきた。
私、アトナ・ジュレースも、幼い頃からジュレース語に加えてアルテック語を覚えさせられた。
ジュレース公国は一妻一夫制で、王室の跡継ぎは男の子が望ましいが、生まれない場合は女性が王位を継承することもある。
社交術、マナー、政治、文化、哲学、宗教……やることはいっぱいあったけど、王室の跡継ぎは私しかいないということが責任感に繋がり、熱心に打ち込んだ。
「アトナ。貴方は女の子ですが、男の子と同じくらい逞しく、賢い子です。どうか男の子のいない王室を支えて頂戴」
「はい、お母様!」
男の子を産めずに気に病んでいる母を少しでも元気付けたかったから、男の子以上に強く、賢くなろうと努力した。