夏祭りの1週間前に彼氏と別れた。
仲は良かった。ただ彼には、私が友達にしか思えなかったというだけだった。
つまりは折角買った花柄の浴衣も、下駄も、簪も、全部無駄な出費に終わってしまったというわけだった。
「ほんと、強がりだよね」
カフェのテラス席、チョコレートケーキをつつきながら、目の前の親友は揶揄うように笑みを浮かべる。
この女には私を慰めるという考えがないようだ。
「強がりじゃないし、もうどうでもいい」
思わず強い口調で言い返して、チーズケーキにフォークを突き刺した。これを強がりと言うのだろうか。
「それを強がりって言うんだよ。昨日別れたのに、どうでもいいってことはないでしょ」
考えていた通りの返事が帰ってきて、一瞬こいつはエスパーか何かかと疑う。