貴女に沈丁花を

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11:水色瞳◆hJgorQc:2020/05/19(火) 21:58

その後、2ヶ月。
時間感覚が正常になりかけてきたおかげで、少女がやや待ちくたびれてきた時だった。
勇者のパーティーが到着した。

「あー、いたいた。元気してたー?」真っ先にネアが声をかけてくる。
「元気以外になりようもないですが元気です」
「······??なら良いけど」

今回は、ネアが世界について色々教えてくれるということなので、少女は何処から持ってきたのかノートを用意している。

「ネア先生ー」
「いやー、てれるぜー」
「こいつに任せて良いのか」ブロウが割って入ってくる。
「魔法は私の専門だよー。それに歴史はアルストがいるしー」ネアは今まで一言も発していない盾使いに視線を向ける。
「······呼んだか?」
「じゃ、そういうことで。まず、魔法についてだけど······」

解説はとても分かりやすくなっていた。少女が要約したところによると、記録上の魔法の始まりは、数万年前の遺跡の陰から見つかった最高純度の『魔素』によって魔法の力が散りばめられた、ということだそうだ。またその時、負の感情によって作られた魔素が魔王を、そして魔物を生み出した。
魔法についてはあまりに複雑だったため、また少女がそのちしきを全く持たなかったため、ネアは三回に分けて解説することにした。···つまり、アルストの一人損である。

「ごめんねー、ー······あ、えっと、名前···」ネアが謝ろうとしたところ、今更だが名前を聞いていないことに気がついた。
「名前···ですか。『人類最後の悪ふざけ』ですよ」
「長い。···私が決めていい?」
「えっ?······いえ、こんな私に」
「ねぇ、何で貴女は自分をそんなに下げるの?···私たち、もう友達なんだからさ。···それに、名前ないと、不便じゃん」ネアの瞳が、言葉が少女の心を射抜く。照れ隠しなど、必要ないくらいに。


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