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行きはアクアベルの力でカットされたが、帰りは自力で帰らなければならないスミレとネアだった。······索敵魔法が飛んできた場合の対処はしてくれるらしいが。
まだ身体が思うように動かないので、必然的に優れた身体強化魔法を扱えるネアがスミレを背負って帰ることになる。水の上を歩いて。
「スミレ、姿勢なるべく崩さないでねー?······走れたら安定したし早いんだけど······まだ走れないやー」
申し訳なさそうに言うネアに対して、スミレは首を振る。
「ううん。こっちの方が······あったかい」
「······そっかー。私も、この方がいいかな······」
そんなこんなで花の島まで戻ってくると、アクアベルの地図の通りベルシリーズの3人が集まっていた。
「はーい!オレンジベルだよ!2人とも、今回はよろしくね!」
「レッドベル。······まあ、がんばろうか。」
「シルバーベルだよ。ふふん、魔法対処なら任せて」
そんな感じで、普段とは何ら変わらない様子で彼女らは名乗る。しかしよくよく観察してみると、その瞳には様々な感情が蠢いているのがわかる。
「······」
その内心を察したスミレは何も言えなくなってしまった。────仲間の敗北、捕囚に対する怒り、悔しさ、絶望。『最後のチャンス』に向けた、投げやりともとれる熱情、希望、そして向け先を失った愛情が渦巻いていた。
ただ、戦場に出る前から意気消沈しているよりはマシである。ネアは頃合を見計らって先程の地図の写しを開いた。
「多分3人はアクアベルから聞いてると思うけど······まずはどんな感じで大陸に行くか決めようかー」
「そうだね。正面から行っても見つかって撃墜されるのがオチだから······オレンジベル」
「······き、聞いてるよ?」
無策に突っ込むのは言語道断である。この中で一番それをしでかしそうなオレンジベルに釘を刺したレッドベルだった。
「魔法対策では一番頼りになりそうなのがシルバーベルさんですよね。その銀ってどのくらいまで展開できるんですか?」
スミレの質問に対してシルバーベルは少しだけ考えていたが、
「うーん、あんまり広がらなきゃこの5人は守れるけど······」
と、どこか煮え切らない回答だった。見かねたレッドベルが何かしらの活路を見出そうと乗り出す。
「······シルバーベル。あれから銀を結構改良してたよね。そろそろその性能を教えてほしいな」
「······うーん······いいや。背に腹はかえられないからね」
シルバーベルの説明によると、色々と試行錯誤した結果、彼女が操る魔封の銀には様々な改良が施されたらしい。特に顕著なのは、もはやそれを近付けない程まで成長を遂げた、読心魔法や幻術などといった目に見えない『魔法の波』への耐性である。
ただ、如何せん一度に出せる量は変わらなかった、というが。······だが、ここにおいては関係なかった。
「······それ!シルバーベルさん、銀って切り離しても効力は続きますか?」
「え?うん、2時間くらいなら」
スミレはその答えを聞いて、
「近付けさせないくらいでしたら······小分けにして、5人がそれぞれその銀の欠片を持っていれば······読心魔法や索敵魔法を防げるのでは?」