──お父さんが殉職した。
その知らせを受けたのは2ヶ月前。
有名政治家の式典で主催者のボディーガードを務め、式典中に襲いかかった暴漢から主催者を庇って亡くなった。
暴漢はその場で取り押さえられたものの、別の人間に脅されての犯行だと供述している。
指示したという男の正体は未だ不明。
「犯人は……暴漢に指示した男は、まだ分からないって……うぁぁぁあっ! 誰よ、誰なのよぉぉお!」
「お母さん……」
普段白い服を好んで着るお母さんの喪服姿は見慣れなくて、なんだか怖かった。
お母さんがうずくまって泣くものだから、畳に涙が滲む。
「いつか絶対、私がお父さんを殺した犯人見つけるから」
手がかりもない、後ろ盾もない、ただの一般人。
見つからないかもしれない。
それにその男は直接手を下したわけでも、お父さんを狙っていたわけでもない。
それでも結果的にお父さんを殺めた男を、探さずにはいられなかった。
私は密かに、本来殺されるはずだった有名政治家に近づくことを考えた。
けど次期総理大臣とも噂される官僚に、貧乏高校生の私が易々と近づけるはずも無く──。
どうしたもんかなぁと考え込んでいる時に、お父さんが次に契約するはずだった顧客、柚咲家から電話が来た。