2.未桜姫
今日は初めてのダンスレッスン。
緊張しながらスタジオの入り口のドアを開けようとしたら偶然、メンバー最年長の下沢 絵莉佳(しもざわ えりか)ちゃんに会った。
本物の絵莉佳ちゃんだ…!背は高いのに、顔小さい!
「よろしく。美晴さん。私の事は絵莉佳って呼び捨てで良いから。」
絵莉佳はそう言って、スタジオに入ろうとした時、もう一度私の方を振り返り、こう言った。
「それと、新人だから言っておくわ。未桜には気をつけて。逆らうと酷い目に遭うから。」
え…?どういう事?
私は頭の上にクエスチョンマークを作って、スタジオに入った。
その時。
「いやぁぁぁ!!!」
誰かの悲鳴が私の耳に入った。
スタジオの真ん中で、野 未桜(たかの みお)ちゃんと、南条 華月(なんじょう かづき)ちゃんと、稲垣 杏(いながき あん)ちゃんが、頭を抱えてうずくまっている楠本 理子(くすもと りこ)ちゃんを見下ろしていた。
未桜ちゃんは、不気味な笑みを浮かべながら、
「ここにいられると楠本菌の臭いが漂ってレッスンに集中出来ないんだよねぇ。出てけとは言わないから、ここにいてもいいように、消臭してあげるよ」
そう言って、理子ちゃんの頭からバスタブ用の洗剤をかけた。
「ゲホッ…ゴホッ…」
理子ちゃんは口を袖で押さえて咳込んだ。
何これ…いじめ?
私は、驚きのあまり、声も出なかった。
私の瞳に映っているのは、テレビで見るような、キラキラした笑顔の3人ではなかった。
意地悪な笑顔を浮かべ、悪に満ちた目をしていた3人が映っていた。
目を擦ってみても、この、光景が映っているのは変わらなかった。
信じられない…。幻覚じゃないんだ…。私が今までテレビで見ていた3人の顔は、表の顔
だったんだ…。
「これで分かった?あれがピンロズの正体よ。」
私の耳元で、絵莉佳が呟いた。