体育館に移動してしばらくすると、校長先生の話が始まった。1年生以外の学年は教室で待機しているはずだ。中学生になった自覚をもち、勉強や部活に励むこと。優しい先輩ばかりだから、分からないことがあったら聞くこと。要約するとそんなところだ。
隣に座っていた、小学校の時に同じ野球チームだった凛輔(凛太と名前が似ていることから、凛々兄弟と言われていた)に目で合図をされた。
「話が長くね?」
そうだなと、目で俺も応答する。自分にしか分からないくらいの小さなため息をついて、もう一度前を向き校長の顔を見てみる。
希望に満ちた中学生活になるのだろうか。自分にも、漫画や小説にあるようなキラキラした学校生活が送れるのだろうか。
ふと考えたが、ないな、と心の中で自分を笑った。そして、校長の話にもう一度耳を傾けた。