彼と直接話をしたのは、その数日後の事だった。
「三好っていうんだ。三好…悠ニ……ゆうじ?だっけ」
「合ってます」
彼から私の名前を確認されることはなかった。しかし、仮入部期間が終わる頃には私の名前を自然に呼んでいた。
「伊角さん」
同期のチームメイトの中には、私のことを奏音≠ニ、呼ぶメンバーもいたが、どうやら苗字呼びを選んだらしい。
グラウンドにいる時の彼は先輩にしっかりとした敬語を使い、かしこまっているように見えた。学校内でも学級委員が毎日しているあいさつ運動をすすんでやっており、私は彼に対していい印象しか持っていなかった。