____シュウウウ
ぐつぐつと沸騰する熱湯が蓋を持ち上げ、熱を帯びたヤカンから白い湯気と共に音が出た。
あたしはのそりと体を起こすと、毛玉だらけのダサいスリッパでコンロまで歩き、カチ、とコンロのスイッチを押して火を消した。
ふてぶてしく光る金色のヤカンは次第に静かになった。
その傍らには発泡スチロールでできた安っぽいカップ麺が一つ。
もう待ちきれない。あたしは空腹の胃に固唾を押し込んでヤカンを手に取った。
そのまま腕を傾けると、透明の熱湯が湯気を立てながらカップ麺の中に注がれていく。
命を得た麺が踊り出し、具が次々に水面へと顔を出した。
…ああ、この瞬間が幸せだ。
完全にお湯で満ちたそれを見下ろしながら微かな達成感に浸る。
空になったヤカンをコンロに戻し、そっと優しくカップ麺のフタを閉めた。
3分間。あたしはその時間をきっちり守る。
約束の時間にはルーズだったが、この時だけは別だ。
恋人に会いたいと願うように、あたしも早くカップ麺を食べたい。
実にしょーもない昼下がり。