……その時、男どもより早く、今までずっと無言を貫いてきた店主が手を挙げた。
「……乗った。ここまでされて黙ってる訳にはいかないからな」
俯いていた顔を上げる。視線は壁に空けられた風穴に、……そして次に女性に。
不敵な笑みは期待ゆえにであった。
「ありがとうございます。……他には?できれば操舵ができる人だと助かる」
女性がそう言った時、再び砲弾が飛んできた。……が、今度は最初に飛んできた火薬入りでない砲弾を掴んで投げ、炸裂させた。もはや人間ではなく、別の生物と言われても男達は信じるだろう。
……そしてようやく手が上がる。
「……俺より操舵が上手い人はみんなさっきので死にました。……一応、下手ですが出来ないことはない」
そう言って、破片の直撃から間一髪で逃れたらしい男が歩み出てくる。彼も彼で傷を負っていたが、歩けない程ではない。
「……うん、他には?」
女性は頷いて歓迎する。……そして再び問いを投げるが、返答はもう無かった。
酒場の調理室兼倉庫内。中を一通り眺め、女性が尋ねる。
「武器とかはありますか?」
「……ん?いや、あんたなら素手でいいだろ……と言いたいところだが、ほれ」
そう言って店主は彼女に、よく手入れされているカトラスを渡す。そして彼はというと、壁に飾られていた銃を外してその手に握る。
操舵を任された男は、「この中から選べ」と渡された箱の中身を見て驚愕した。……数、種類、質……どれにおいても一級の装備がぎっしりと詰まっていた。
「……………」
そのまま固まっていると、店主がそれを覗き込んできた。
女性はいつの間にかドアを開けて酒場の中に戻ったらしい。
「さっさと選べ、もう一発来るかもしれんぞ」
「……これで」
彼が選んだのは軽い長刀だった。
……それにしても、これほどの物がある、ということは、ここの店主は昔海賊の一員だったのだろうか。
男はそのことを質問してみる。
「……ああ。結構前になるが、俺はとある海賊団の一員だった。……それが今ではこのザマさ」この銃はその時からの相棒なんだ、と付け加える。
男が黙っていると、再び轟音が轟いた。……どうやら女性がまた砲弾を迎撃したらしい。彼女が入って来る。……出血は未だ止まっておらず、よれよれのシャツを濡らしていた。
「準備できた?」
僅かに顔色が悪くなっている。
「ああ。早速行くか。あんたならどうかできそうだ」店主は気軽な調子で言う。
「……その前に、包帯くらいは巻きませんか」
瓦礫に隠されていたのは超小型帆船。
ここに、今……反撃の時間が始まる。